★「アンネ・フランクの記憶」

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「アンネの日記」のアンネ・フランクの足跡をたどる著者の旅の記録は、アンネへの思慕に満ち溢れています。
「死」は極めて個人的なもの。
たとえどんなに歩み寄ろうとしても、決して他人には踏み込めないもの。
その掟をこえて、著者は無防備な「少女の心」でアンネに近づこうとします。
理知的に構築された小説を書く小川洋子という人のどこにこんな心が隠されていたのか。
他の作品を読む上で、このエッセイはとても大きな意味を持っているのかもしれません。

アムステルダムのアンネの家を訪ねた事があります。
日記帳に几帳面に綴られた文字のあまりにも大人びて整っている事に驚きました。
初夏の陽光にあかるく照らされた部屋の記憶。
その部屋にアンネたちが過ごした間、一度もカーテンは開けられる事無くその陽光も彼女の上に降り注ぐ事は無かったことを今あらためて思います。

「忘れられないため」に必死に綴られた「生への希望」の記録「アンネの日記」。
人はなんのために書くのか。
その問いにこれほどまっすぐにこたえた書はないのかもしれません。
もう一度きちんと「アンネの日記」を読んでみようとおもいます。

「アンネ・フランクの記憶」
by kamakurasea | 2010-08-18 23:27 |